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活動事例

(事案の特定を避けるため、一部事案を変更し、または複数の事案を組み合わせております)

重点取扱分野

知的財産法、独占禁止法、倒産処理法、労働法、相続法

1、知的財産法と独占禁止法(ライセンス契約と不公正な取引方法)

事案の概要
X社(相談者)はY社に対して特許及びノウハウのライセンスを行うことになり、その契約書を作成することとなりました。
その際、X社としては、Y社がX社のライセンスを受けて製造販売する製品の原材料についてはX社からのみ購入する義務をY社に課したいとの意向を有しておりました。
回答の趣旨
原材料の購入先制限については、「 知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(平成19年9月28日、公正取引委員会)の第4、4(1)にガイドラインが示されており、特許・ノウハウ技術の機能・効用の保証、安全性の確保、秘密漏洩の防止の観点から必要であるなど一定の合理性が認められることがありますが、必要な限度を超えて制限を課すときには、原材料に係る制限はライセンシーの競争手段(原材料の品質・購入先の選択の自由)を制約し、また、代替的な原材料を供給する事業者の取引の機会を排除する効果を持ち、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当するとされております。
そこで、 X社によるY社に対する原材料購入先の制限は、上記の特許・ノウハウ技術の機能・効用の保証、安全性の確保、秘密漏洩の防止の観点から必要であるなど一定の合理性が認められない限り、そのような制限を付さない方が良いと思われます。
紛争予防の観点
契約条項が独占禁止法に違反するか否かの判断においては、公正取引委員会から公表されているガイドラインを参照して検討することが必要です。

2.倒産処理法(企業再建)

事案の概要
X社(依頼者)は、経営が悪化し、手形不渡りが必至の状態となりました。
ただ、 X社所有の製造機械は、メインバンクへの譲渡担保に付されており、支払を止めることにより、当該機械を失う可能性がありました。
再建の過程及び帰結
X社の再建のためには民事再生申立てが必要と判断し、裁判所への事前相談を経たうえで、民事再生申立てをいたしました。
申立てと同時に、裁判所において保全命令がなされ、民事再生申立前の債務につき原則として弁済が禁止され、とりあえずの資金繰りの目途が付きました。
申立てと同時に主要な債権者・顧客と面談してその協力を要請するとともに、債権者説明会を開催し、債権者らの協力をお願いいたしました。
製造機械の譲渡担保を受けたメインバンクに対しては、当該機械の現在の価値に相当する金額を分割弁済することを条件として、当該譲渡担保を実行しないとの協定(別除権協定)を締結していただきました。
その後、X社の資産及び負債についての公認会計士による財産評定、更には債権の認否を経て、裁判所に再生計画案(自主再生、分割弁済)を提出いたしました。
再生計画案提出のためには、具体的な売上増加、費用削減策を練り、将来予測に基づく貸借対照表、損益計算書、資金繰り表を作成し、再生計画案に添付して裁判所に提出いたしました。
裁判所において再生計画案の付議決定がなされ、その後、債権者集会が開催され、再生計画は認可に至りました。
再建の観点
営業利益が出ていれば(しからずとも売上増加及び費用削減によって営業利益を出すことができるのであれば)、民事再生による再建の可能性があります。
営業に必要不可欠な資産に担保が付されていたとしても、別除権協定、又は担保権消滅請求などの手段により、当該資産を確保することは十分可能です。
まずは、早期の相談と、十分な将来予測、更には経営者が再建への強い意志を持つことが肝要です。

3.相続法

(1)遺産分割

事案の概要
被相続人には子がなく、兄弟姉妹及び甥姪が相続人でしたが、相続人間で遺産分割協議が整いませんでした。
事件処理の過程及び結果
相続人のうちの1人から依頼を受け、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをいたしました。
調停期日においては、遺言書の効力(被相続人の自筆によるものかどうか)が問題となり、また、遺言書に記載のない遺産の処理をどうするのかにつき協議が持たれました。
調停委員による調整を経て、相続人全員が納得する形での遺産分割協議が成立し、それに沿った調停調書が作成されました。
紛争予防の観点
遺言書を作成する際には、その効力に疑いが持たれることがないように、法に則った作成が必要です。
また相続人全員が納得して従うであろう方に遺言書を預けるのが、遺産分割協議を徒に紛糾させないポイントかと思われます。
可能であれば、公証役場において公正証書遺言を作成してもらうのが良いかと存じます。

(2)限定承認

事案の概要
被相続人の死亡後、相続人ら(依頼者)が、被相続人の住まいなどを整理し、その暮らしぶりを見ると、どうも何らかの借金をしていたように思われました。
ただ、被相続人には、自宅土地建物やある程度の預貯金があり、遺産と借金のいずれが多いか分からない状態でした。
事件処理の過程及び結果
遺産と借金のいずれが多いか分からない場合には、限定承認という方法があります。
すなわち、限定承認においては、遺産の方が多い場合には遺産から借金を完済した残りを相続することができ、反対に借金が多い場合には、遺産を換価してその範囲で弁済すれば、それ以上の借金については支払う必要がなくなります。
そこで、家庭裁判所に対して、限定承認の申述を行い、知り得る債権者全てに限定承認を行った旨を通知し、また官報にその旨を公告いたしました。
そして、債権者からは債権届出を受け付け、その認否を行うとともに、遺産を換価し、債権者への弁済資金を確保いたしました。
債権認否を行い、遺産の換価を行うことにより、結局、遺産の方が借金よりも多いことが判明し、相続人らは、遺産から借金を弁済した残金を相続することができました。
処理の観点
被相続人の遺品などを整理されている場合に、どうも何らかの債務を負担しているように思われる場合には、限定承認を行った方が無難です。
相続放棄をしてしまっては、遺産が多かった場合に、相続できたはずの遺産を相続できないことになりますし、そのまま相続(単純承認といいます)すると、借金が多かった場合に、遺産を超えて借金を相続して負担することになってしまいます。
限定承認を行えば、遺産が多い場合には借金弁済後の残余財産を相続することができますし、借金の方が多かったとしても遺産を換価して得られた現金の額以上に支払う必要はありません。
但し、限定承認は(相続放棄も)、原則として、相続の開始を知ったときから3か月以内に行う必要がありますので、早期に判断して行う必要があります。
なお、遺産及び債務の調査のために時間を要する場合には、家庭裁判所に申立てをすることによって、この3か月の期間を伸長することも可能です。
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